
10月30日に写真集『DECADE -десятилетие-』を出版したМФК PHOTOS。代表の中村さんにお話をうかがいました。場所は「ユーリー ガガーリン 有人宇宙飛行60周年写真展」が開催された群馬県庁にて。当日МФК PHOTOSも、『DECADE』出版を記念して掲載作品の一部を会場の一角で展示披露されていました。
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── 写真集の出版と写真展の開催、おめでとうございます。当日の会場での反響はいかがでしたか?
中村正樹 (以下 中村): コロナ禍で、まだ遠出をしにくい環境でしたけど、お越しいただき感謝しています。
会場で、じっと見つめながら考え込んでいる方もいらっしゃいましたし、写真をきっかけに様々な疑問が発生して色々と聞いてくださる方もいらっしゃいました。写真を通じてロシアという世界を感じて頂いたように思います。皆さんロシアについての興味を深めていらっしゃって、こういった活動が日ロの交流につながるのだなと実感できた展示会となりました。
── 今回前橋で展示を行うことになった経緯を教えてください。
中村: 主催の日ロ協会群馬さんとは2018年に実施した「レンズの奥のロシア」写真展がきっかけです。この時にお声掛けいただき、同年のロシアフェスティバルin群馬に招待展示させていただきました。これがきっかけで2019年も展示をさせて頂いており、2020年はコロナの影響で展示はしませんでしたが、今年、今回の出版タイミングとも合って写真集出版記念事業として展示をさせて頂くことになりました。いつもご協力をいただいている日ロ協会群馬の皆様には大変お世話になっております。

── 写真集の中身は後ほどゆっくり伺うとして、まずはМФК PHOTOS(以下 МФК)の、そもそもの成り立ちなどお話しいただけますか。
中村: 私がモスクワに暮らした2010年~2016年のことです。現地にいらっしゃる日本人の方でも写真・カメラが好きな方が何人かいて、写真の話をネタに飲み会を始めたことがキッカケでした。はじめはただカメラの話などをするに過ぎなかったのですが、皆さん本気になって写真に向き合うようになっていったのを感じていました。
── それから本格的に写真部としての活動が始まったのですね。
中村: 最初の撮影会は個人宅でのプロフィール写真会からスタートしました。お互いのプロフィール写真を撮りあうというもの。この時には、すでに今も継続している写真講座、「写真塾」と言ってますが、その原型の資料を使って講習ののち撮影という形でした。

── 中村さんご自身が写真を始められたきっかけは?
中村: 元々父親は新しいガジェット好きで、カメラやカメラの本などが家にありました。とはいえ、そんなにのめりこむことは無く、ほこりをかぶっていたのを触らせてもらったのが最初の出会いだったと思います。そんなことも忘れていた頃に、とある映像系クライアントの仕事をさせて頂きました。そこでは何を表現するのか?美しさって何なのか?というところから議論は始まり、表現の一つの手段としての写真というツールに再会したのです。
── お仕事でカメラと再会されたという事ですね。
中村: はい。仕事を通じてプロのカメラマンと表現に議論をしたり、様々な学びがありました。私がとてもよかったなと思ったのは、写真の撮り方から写真の世界に入らなかったところです。最終的な表現・世界観づくりから入ることで、カメラのスペックばかりに興味を持たなくて済んだといえます。
この時期から自分でも撮ってみたいという気持ちが沸き上がり、本格的に写真を始めることになりました。
── そして、ロシアに駐在された。ロシアですと魅力的な被写体が多そうですね。
中村: モスクワ市内はもちろん、ロシア国内の都市、近隣諸国にも足を伸ばしました。その中で、思い出深いのはジョージアへの撮影旅行ですかね。写真撮影というのは24時間がシャッターチャンスです。そして滞在時間は限られるので、私が自分で撮影に行くときはかなり動き回ることが多く、この撮影旅行時は周りの人を自分のペースで一緒に行動したら、バイカル湖マラソンを走り切るメンバーさえも疲れが出たという事があり、いつの間にか体育会系写真部と言われた時期がありました(笑)
これが体育会系かどうかは分からないですが、時間を大切に撮影する。そしてこうやって仲間たちとの時間も大切にする。それがМФК PHOTOSなのです。
── そんなメンバーたちとの10年の時間を集めた写真集が『DECADE』なんですね。
中村: 24時間がシャッターチャンスで、それが10年分詰まったらどうなるでしょうか?そして、さらにそれが25人分あるとすると。。。考えるだけでワクワクしませんか?
── たしかに。しかし、メンバーのみなさんは写真は未経験の方が多かったのですよね?
中村: ええ、もちろんМФК PHOTOSに入った時点では写真の事なんてよくわからなかった人もたくさんいます。しかし、この10年の活動を通じて少しずつ皆さんの表現は上達していっていますし、それを振り返ってみる良い機会になりました。
── 写真集タイトル『DECADE』に込めた想いは?
中村: タイトルに関しては結構悩んでつけました。様々な世界観があるメンバーの想いがひとつになるようなタイトルにするにはどうしたら良いのか?もともとロシアで立ち上がった団体ですので、ロシアに関するテーマにするのかなど様々な議論がありましたが、世界各国に広がっている団体ですので、ロシアに限らずМФК PHOTOSの設立10年とシンプルにテーマを決めることになりました。結果的にそれぞれのメンバーが10年の思いの丈をぶつける形になり、それぞれの強い世界観を上手くまとめるテーマになったと思っています。
── 写真集の構成は?
中村: それぞれの人ごとに6ページ分の場所を割り振りました。そのページの中に自分の10年間が凝縮されています。手に取ってみていただくと分かりますが、「この人はこういう世界を切り取る人なんだ」ときっと感じてもらえる作品集になっています。そういった謎解きも含めてこの写真集を楽しんでもらえればと思っています。
今日、会場にメンバーも何人か来てますので、感想を訊いてみてください。
── そうですね。では、ご夫婦で写真集にも参加されている今村さん。今日の展示はいかがですか?
今村: 今回はガガーリンの写真展示会とのコラボとの事で、モスクワ写真部のメンバーが撮ったガガーリン像から始まっているのがとても印象的でした。その後に続く、いろんなロシアの写真を見て、来場者が「これもロシア?」と楽しんでみて頂けているのが良かったです。


── 写真集については?
今村晋一郎: ひと通り作品を楽しんだ後、巻末のコメントも是非を読でみてください。作者の意図やこだわりが分かるので、その後もう一度読み返しても面白いと思います。
今村なおみ: 違う時代、場所、季節、テーマで撮影しているにも関わらず、全員の作品が繋がって、まるで一つのストーリーになっているように思いました。会場ではKindle版の写真集も見せていただきましたが、本とタブレットで見るのでは、同じ写真でも発色の違いなどから違って見えるのも面白かったです。

── そういえば、今回、Kindle版も出されていますが、その狙いは?
中村: 印刷された写真を手に取ってもらうのが良いのですが、我々の団体は世界中にメンバーが広がっていることもあり、いち早く手にしたいと言う方のために海外からも注文が出来るKindle版も販売することになりました。
逆にKindleでないと買わないと言う日本の方もいらっしゃって、予想外の売り上げもあります。
── 写真集作りのプロセスを少し詳しく教えていただけますか?
中村: 皆さんそれぞれの思いもあり、本としての全体的なテーマも加味しながらまとめ上げるのに苦労しましたね。今回の出版は半年以上時間をかけていますが、最初に手をつけたのは写真集づくりのための「テーマ」を決めるにはどうしたら良いかの講義を開催するところからでした。
── みなさんはじめての方が多かった?
中村: メンバー内で写真集を出したことのある人は一握りで、どうやって自分の世界を表現すれば良いか分からない方が多かったです。その為に一からみんなで学び、考え作り上げていきました。
『DECADE』というテーマが決まって、メンバー個々人が自分の10年と向き合うところから作品選定が始まりました。25名の過去10年間なのでものすごい枚数から絞り込まれていくわけです。その選定されたものから、編集担当と協議を重ね、レイアウトを決め、最終原稿まで持っていきました。最後はプロモーションも兼ねたこちらの展示準備も重なり慌ただしく写真集を作った気がします。
── それをコロナ禍の中、やり切ったわけですね。
中村: コロナ禍は、逆に良かったことの方が多かった気がします。緊急事態宣言等もあり、リアルでの活動は制限される中、みんなが一つの目標を持って何かを作り上げると言うのは大きな意義になりました。この出版を通じて新たな結束感も生まれました。また制作段階に於いてもほぼ全てがオンラインでの会議となり、海外在住メンバーとのやり取りも違和感なくスムーズに行うことができました。
── そんな作業を振り返っての感想を、もうひと方、今日いらっしゃってるメンバーに伺いましょう。ロシアに音楽留学の経験もあるピアニストの大塚玲子さん。
大塚玲子ピアノ・リサイタル リストと19世紀後半のロシアピアニズム
大塚玲子 (以下 大塚): コロナ禍でそれぞれが引きこもり生活を強いられ、なかなか人に会うこともできなくなり、世の中が色んな意味で大きく変わっていく中、私自身も仕事の機会が無くなり、毎日呆然と、今一体自分に何ができるのだろう…と悩み模索していたちょうどその頃、この写真集初出版の企画がはじまりました。
最初は、この状況のなかで本当に実現できるのか、素人の私が参加するのは無謀ではなかろうか、と不安ばかりでしたけど、作品を作っていく過程で中村代表のこのプロジェクトに対する心からの熱い想いを知り、これはきっと素晴らしいものができるに違いないと確信しました。
── 実際に出来上がった写真集をご覧になって、どうでしたか?
大塚: メンバー一人一人の人生や経験、想いが作品からストレートに伝わってきて胸が熱くなりました。心からの感動と嬉しさで涙が出そうになりました!
大変な時代にもかかわらず皆で一つの大きなものを作り上げられたことは本当に素晴らしく貴重な経験でした。

── よいタイミングでの作業だったのですね。
大塚: はい。メンバー全員にとって一生忘れられない大切な思い出となることでしょうし、写真を見てくださる方々にも、我々のメンバー全員のあたたかな想いが伝われば幸いです。
── ありがとうございます。大塚さんは、来年ピアノリサイタルも予定されていらっしゃるそうですね。
大塚: はい、2月25日表参道のコンサートサロン「パウゼ」で、日本ショパン協会さん主催のピアノリサイタルを開催させていただきます。
── コロナも落ち着いてきていますし、無事の開催の折には、また詳細について、当サイトでもお伝えしたいと思います。
大塚: よろしくお願いします。
── さて、中村さん、今後の展開について教えてください。
中村: なかなかリアルで集まることは難しく、写真展の頻度も低くなっていますが、今回の写真集『DECADE』出版を記念して、今回の前橋に続いて、12月にはコンサートと結び付けた展示や、2022年1月には埼玉の日本料亭での展示、代々木での展示などいくつか計画があります。モニター越しではないリアルの写真というのにも是非触れてもらう機会を増やしたいなと考えています。また皆さんにご紹介できる状況になりましたらお知らせさせていただければ幸いです。
── これをお読みになって「МФК PHOTOSに参加してみたい」と思った読者の方がいるかもしれません。
中村: どなたでもご興味ある方は参加できます。時々ロシアと関係していないと入れないの?と聞かれますが、我々はオープンな団体ですので、いつでもお声掛けください。
── 現在のМФК PHOTOSの活動はどのような形で行っていらっしゃいますか?
中村: 定例会を、今はオンラインで約2か月に1回行っています。モスクワでは1か月に1回。それぞれ毎回テーマに沿った作品を持ち寄り、講評会を行っています。なかなか外に出歩けず撮れる被写体、タイミングも限られる中ですが、皆さんそれぞれ工夫をしながら写真と向き合っています。毎回の写真塾も好評ですので、もしご興味がある方はご連絡いただければ幸いです。
МФК PHOTOS 公式Facebookページ:
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МФК PHOTOS公式ページ:
https://mfk-photos.com
МФК PHOTOS設立10周年写真集
『DECADE -десятилетие-』
- 書名
- DECADE (десятилетие)
- 予価
-
3,400円 (税込) ペーパーバック
3,000円 (税込) Kindle版 - 発売日
- 2021年10月30日 (土)
- 判型
- 20cm x 21cm
- 頁数
- 156ページ
- 著者代表
- 中村正樹
- 著者
- 山田直芳 奥竹翠 岸本良樹 YAJ(矢島徹至) 大野真理 坂本航司 中山信彦 井熊浩登 山田智子 岩崎優子 山田紘揚 今村晋一郎 今村なおみ 遠藤剛 大越誠司 大塚玲子 木村顕悟 椚田豊 小林圭子 高田裕子 濱田誠二 小倉つば芽 小田光世 寺島栄一
- ロシア語翻訳
- Alina Dolganova
- 販売場所
- Amazon (ペーパーバックとKindle版)
- 発行
-
一般社団法人日本電子書籍技術普及協会
〒531-0001 大阪府大阪市北区梅田 1-11-4-1000 - 企画
- МФК PHOTOS https://mfk-photos.com/

中村正樹
МФК PHOTOS 代表
https://masakinakamura.com
Instagram @masakinakamura_street
2010年からロシアに拠点をおいての撮影活動を続けており、メディア露出や個展の開催を行いながら自身で立ち上げたМФК PHOTOS(読み:エムエフカーフォトズ) の講師でも活動中。2014年~2016年の間、ロシアで日本人初のバイカル湖アイスマラソンのオフィシャルカメラマンを務め、多くのメディアで取り上げられている。2016年より日本に活動拠点を移し、国際フォトコンテストなどのコンテストで受賞。ロシア・セルビア・モルドバなどの国としての魅力発信を始め、日本の各地域の魅力発信にも力を入れている。映像作家としても活躍しており、音楽・演劇などとのコラボレーション活動も行っている。

МФК PHOTOS
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2011 年、モスクワで日露写真家の中村正樹が立ち上げた写真家集団 (Московский фотоклуб)。 写真講座や品評会を中心として、撮影会や展示会開催などを行っている。写真を媒介として、 日本の人々にロシアをもっと知ってもらい、好きになってもらうための啓蒙活動や、様々な地 域の魅力発信を続けている。現在ロシアに限らず世界各国にメンバーが在籍 (フランス・アゼ ルバイジャン・中国・シンガポール・タイ等 )。通称エムエフカーフォトズ。
