
去る6月25日(火)、東京の武蔵野市民文化会館にて『ミキーツキィリサイタル』(ロシア文化フスティバル2019 in Japan 公式参加公演) ×『4 notes from Russia』写真展 が開催されました。
ロシアにおいてボリショイ劇場と双璧をなすダンチェンコ劇場の看板テノール歌手ヴァレリー・ミキーツキィと、そのご子息でピアニストのアントン・ミキーツキィの親子共演、2018年より始まった『日露交流年』のプログラムでもありました。

会場のある武蔵野市は昭和の頃より(当時ソビエト連邦の)ハバロフスク市と文化交流を続けており 、さらに今年日本で開催されるラグビーワールドカップのロシアチーム公認キャンプ地でもあり、ロシアとは縁の深い街でもあります。
主催は、日本ではあまり知られていないロシアのオペラ・オペレッタやロシア歌曲を紹介する目的で設立されたNPO法人ヘラルドの会。理事長はご自身もソプラノ歌手でいらっしゃる平岡貴子さん(関連記事➡️ «アンドレイの世界» part II 〜映画「ソローキンの見た桜」公開 特別公演〜 )。

私とテノール歌手のヴァレリー・ミキーツキィは、2010年にプロコフィエフ作曲オペラ「戦争と平和」で共演したのがきっかけで、8年以上の親交があります。 今回は、息子さんの初来日と海外初の親子共演ということで、今までとは違う思い入れがあったようです。
ロシアと縁の深い武蔵野市で公演させていただけたこと、ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。
МФК PHOTOSの方々の写真を通して、ご来場の皆さまにロシアの雰囲気を感じていただけたこと、大変嬉しく存じます。
ジャンルを超え世代を繋ぐ日露交流。 そんなことを心におき、これからも地道に活動を続けて参ります。 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。




プログラムはプッチーニ作曲のオペラ『トスカ』『蝶々夫人』『トゥーランドット』からのアリア、チャイコフスキー作曲のオペラ『エヴゲーニィ・オネーギン』『スペードの女王』からのアリアや歌曲『それは早春のことだった』、ラフマニノフ作曲のピアノ曲など。





父ヴァレリー・ミキ―ツキィのホールを震わせる歌と子アントン・ミキ―ツキィの精緻かつ力強いピアノ。
見事に息の合った親子の演奏。
お互いに尊敬し誇りに感じているであろう様子に感動を覚えました。
『4 notes from Russia』写真展
МФК PHOTOS の写真家 YAJ(矢島徹至)氏が武蔵野市在住という縁で同時開催となった『4 notes from Russia』写真展ではМФК PHOTOSの4名の写真家による、四者四様のロシアを見せていただきました。
『ロシアの光』中村正樹


МФК PHOTOSは2011年にロシアで立ち上げ、日露両国で写真活動を続けています。そんな中、2018年から今年にかけての「ロシアにおける日本年、日本におけるロシア年相互交流年」(日露交流年)事業でも我々の活動の一環として「レンズの奥のロシア」写真展等を行ってきました。この日露交流年を締めくくる閉会式の4日前というタイミングで、我々としてもフィナーレを飾る展示を開催することができたことを喜ばしく思っております。
『ロシアの大地に抱かれて』奥竹翠


ステージ上の、ミキーツキィ親子の肩越しに、私はロシアの風景を見た。しんしんと降り積もる雪、静けさの中にある情熱。そして演奏は、ラフマニノフの「春の洪水」でクライマックスを迎えた。“春が来た!春が来た!” 私が写真を通じて表現したかったことは、まさに春の歓びに満ちた人々と自然の情景だった。ご来場の皆様に、音楽の余韻のままに展示をお楽しみ頂けたなら幸いです。素晴らしい機会をありがとうございました。
『時の彩(いろどり)』坂本航司


武蔵野には大きな街路樹がたくさんあって素敵なんだと、今回一緒に展示をやった仲間が駅までの帰り道で言った。見上げると確かに、戦前からそこにあるのではないかと思われる大樹が、街路に並んでいた。今回のリサイタルを通して、武蔵野には、この街の大樹のように、しっかりとその地に根を張った文化があると感じた。そんな武蔵野とご縁のあるロシア。長い夜と曇天のイメージが強い彼の国にも、明確な四季と鮮烈な色がある。リサイタル会場の自分のブースには、そんなロシアの風景を撮った写真を選び、展示させて頂いた。
『ロマンティック ロシア』YAJ(矢島徹至)


地元で開催のリサイタルで撮影および作品展示の貴重な機会をいただきましたこと、改めて御礼申し上げます。
ヘラルドの会から依頼の演奏撮影を通じ、本物の迫力をダイレクトに堪能させていただきました。望遠レンズ越しに迫るミキーツキィ親子の表現力は、正に圧巻でした。
こちらからの返礼とばかりに、私のコーナーは「武蔵野より愛をこめて」と副題に付けさせていただきました。武蔵野市とロシアの良好な関係の継続を願ってやみません。
終演後にはホワイエにてミキーツキィ親子を囲んでの記念撮影も。
この日来場された武蔵野市議会の品川はるみ議員も記念撮影。品川はるみ議員はモスクワ市等をモデルにしたIT利活用を政策に掲げています。

政策のひとつにモスクワ市の事例を取り上げていたことから、この度お声掛けいただきました。ミキーツキィ親子の歌と演奏に魅了され、写真展ではロシアの風景を堪能し、素晴らしい時を過ごすことができました。お誘いくださったヘラルドの会理事長の平岡様、МФК PHOTOSの矢島様には心より感謝申し上げます。
武蔵野市はラグビーW杯ロシアチーム公認キャンプ地であり、ハバロフスク市とは青年交流事業でも長年の付き合いがございます。
私もこれを機に武蔵野市とロシアの益々の友好に寄与して参りたいと存じます。


ロシアの芸術というと音楽にしろバレエにしろ、何か重厚で敷居が高く感じられている方も多いのではないでしょうか。しかしそれは杞憂です。一度実際に聴いて、観てみれば本物はわかります。
今回武蔵野市ではラグビーロシアチームがやってくるということで、それをきっかけに初めてこののような芸術に触れた方もいらっしゃったかと思いますが、きっとその価値を肌で感じられたのではないでしょうか。
最後に、ミキーツキィ親子よりメッセージをいただきました。

Дорогие японские друзья!!!
Примите слова огромной благодарности за восторженный приём слушателей в вашем восхитительном и волшебном по акустике зале! Дух музыки объединил нас с вами в дни прибывания в удивительном городе Токио! Бесконечное СПАСИБО всем организаторам этого незабываемого концерта! Позвольте пожелать вам самых солнечных дней в году и надеяться на дальнейшее сотрудничество на благо процветания культуры Японии и России!
Российской команде по регби хотим пожелать боевого духа и спортивной удачи на Чемпионате мира по регби 2019 в Токио.
С уважением,
Валерий Микицкий-тенор(Заслуженный артист России,солист Московского академического музыкального театра им. Станиславского и Немировича-Данченко,лауреат международных конкурсов) и Антон Микицкий-фортепиано(лауреат международного конкурса).25.06.2019г.Токио.
親愛なる日本の皆様へ!
素晴らしく音響に優れたホールで、熱狂的に迎えていただけたことを心より感謝しています。 ここ武蔵野の素晴らしい街で、音楽を愛する心が、皆さまと私たちをひとつにしてくれました。このコンサートのことを忘れることはないでしょう。すべての関係者に心より御礼申し上げます。皆様にとって今年最良の日であれば望外の幸せです。これからも日本とロシアの文化の繁栄のために手を取り合ってまいりましょう。
また、今年日本でのラグビーワールドカップで、ロシアチームが闘志を発揮し健闘することを願っています。
皆様のご健勝を祈って
ヴァレリー・ミキ―ツキィ
(ロシア功労芸術家モスクワ・ダンチェンコ劇場ソリスト)
アントン・ミキ―ツキィ
(国際大会優勝ピアニスト)


ヴァレリー・ミキーツキィ
Валерий Микицкий
1987年クラスノヤルスク国立芸術大学卒業(アコーデオン学科)。1991年にグネーシン国立音楽大学(モスクワ)の大学院課程を修了。アコーデオン奏者としてのキャリアをスタート。1990年よりロシア国営コンサート会社 "Concord"(旧 "Soyuzconcert;ソユーズコンサート”)のソリスト。第1回モスクワ国際アコーデオンコンクール(1990)の入賞者。ドイツのヴィッテンで開催された国際現代音楽フェスティバル「Wittener Tage für neue Kammermusik(ヴィッテン室内現代音 楽祭)」およびポーランドのキェルツェで開催された若手音楽家の国際フェスティバル「Jeunesses Musicales(ジュネスミュージカル)」に参加。
モスクワ音楽劇場センターでD.ヴドービンに師事し歌を学ぶ。1999年以降、彼はスタニスラフスキー&ネトロヴィチ=ダンチェンコ記念国立モスクワ・アカデミー音楽劇場のソリスト。幅広いレパートリーをもつ。「モスクワの秋」音楽祭とスペインのオビエド祭にテノール歌手として参加。1999年にオーケストラ「Virtuosi di Mosca(モスクワの巨匠)」のソリストとしてスペインのツアーに参加、A.シュニトケ作曲「ヒエロニムス・ボスの絵による5つの断章」のテノールパートを歌った初めてのロシア人となる。2009年にC.プロコフィエフ作曲のオペラ『戦争と平和』(ハイライト版)のピエール・ベズーホフ役を東京で歌う(「ロシア文化フェスティ バルin Japan 2009」公式参加公演)。スタニスラフスキー・オペラの国際ツアー(アメリカ,エストニア,韓国)に参加。2019年 にロシア功労芸術家の称号を受ける。

アントン・ミキーツキィ
Антон Микицкий
2011年にチャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院を優等で卒業。国際コンクールで入賞。活発にコンサートと教育活動を行っている。モスクワの主要なコンサートホールである、モスクワ国際音楽院、モスクワ音楽院ラフマニノフホール、I.グラズノフ・アートギャラリーで演奏。伴奏者として、ロシア国立アカデミー・ボリショイ劇場、スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ記念国立モスクワ・アカデミー音楽劇場、およびポクロフスキー記念モスクワ室内音楽劇場のソリストたちと共演。国際フェスティバル「モスクワ秋」のコンサート、メイエルホリド慈善財団のコンサートやフェスティバル、およびN.メトネルのソナタのレコード制作(モスクワ国立音楽院)などの独創的なプロジェクトに参加。 国際モーツァルト協会の一員。数々の多彩なコンクールやフェスティバルの審査員を務める。

NPO法人ヘラルドの会
https://gerald-society.jimdo.com
ヘラルドの会は、1994年4月にロシア文化・文学研究家の藤沼敦子によって設立されました。
当時、日本ではあまり知られていないロシアのオペラ・オペレッタやロシア歌曲を紹介する目的で、藤沼が12人の実行委員と共に東京新宿の音楽の友ホールで日本初の「ロシアオペレッタ紹介コンサート」を行ったのがきっかけです。 その時に出演した歌手がロシアオペレッタ界の第一人者で、世界的に有名なヘラルド・ワシーリエフ氏です。
当会は、彼のファーストネームから「ヘラルドの会」とネーミングしました。
その後現在に至るまで、モスクワやぺテルブルグの劇場で活躍しているアーティストたちを中心に招聘してコンサートやオペラ・オペレッタを開催し、彼らの指導による「ロシア歌曲講座」を通じて日本の若手音楽家の育成をはかる等、積極的にロシア音楽の普及・発展に努めてきました。
その中で2004年には、特定非営利活動法人(NPO)の認証を受け基盤を強化しています。
そして2013年に、会の主力メンバーだったソプラノ歌手の平岡貴子が新たに理事長に就任しました。
ロシア音楽の紹介を軸としながら、ロシア・日本の教育機関と連携を取り、小・中・高校生の学校間交流や音楽による国際交流などの教育活動にも力を入れ始めました。 「世界から日本へ、日本から世界へ」の理念の元、更に幅広い世界に活動を広げています。

МФК PHOTOS
https://mfk-photos.com/
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2011 年、モスクワで日露写真家の中村正樹が立ち上げた写真家集団 (Московский фотоклуб)。 写真講座や品評会を中心として、撮影会や展示会開催などを行っている。写真を媒介として、 日本の人々にロシアをもっと知ってもらい、好きになってもらうための啓蒙活動や、様々な地 域の魅力発信を続けている。現在ロシアに限らず世界各国にメンバーが在籍 (フランス・アゼ ルバイジャン・中国・シンガポール・タイ等 )。通称エムエフカーフォトズ。
