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日本におけるロシア

写真家 YAJ (矢島徹至)氏が語る 映画『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』
去る2018年11月18日、カスミつくばセンターにてキューバ/ロシア写真展『ニテヒナル Куба・Rusia』を開催された写真家YAJこと矢島徹至さん。
12月1日より映画『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』が公開されたのを記念して特別にYAJさんにご寄稿いただきました。

『ニテヒナル Куба・Rusia』写真展 @カスミつくばセンター
©MEDIAPRO – RTV Commercial – ICAIC

♪We took off gloriously for progress and harmony. …
 …But as it lifted higher, we lost communication. ♪
words by Yoko NARAHASHI, music by Yukihide TAKEKAWA,
performed by GODIEGO ”Progress and Harmony” from『OUR DECADE』

 かつて1979年に、日本の偉大なロックバンドは、来たる80年代、更にはその先を見越して「我々は高く高く上昇するにつれコミュニケーションを失っていった」と謳いあげた

 折しも、再び大阪での万博開催の決定が下された今月。その楽曲のタイトル”進歩と調和”は、まさに1970年の大阪万博のテーマだった。

 そんなタイミングで公開されるキューバの映画『セルジオ&セルゲイ』は非常に示唆的であり、いろんな点で、”今”観るべき要素を孕んだ作品だ。

 キューバでは偉大なカリスマが世を去った後、国家元首がロシアを訪問しプーチンと会談を持った。対米施策としての冷戦時代の関係性が復活しつつある。そんなタイミングでの、キューバ人とロシア人が協力しあう物語である。国際的な事情の他、作品の中身としても、これまで触れることがタブーとされていたことが描かれるようになるなど、キューバの国内にも変化の胎動が見受けられる(らしい。これはキューバ通の知人からの受け売り)。のほほんとした作風とはウラハラに、様々な”今”観るべき要素が詰まっている。

 時はベルリンの壁崩壊を経て東西冷戦時代が終焉を迎えようとしていた1991年。ソ連邦崩壊により地上への帰還の目途が立たない宇宙飛行士セルゲイの無線を、キューバ在住の大学教授セルジオが受信する。そこから始まる二人の友情物語を、当時の世相を反映し、両国の地上での厳しい生活の様子などを背景に、ハートフルに描き出す作品だ。

 コメディとされているが、ドタバタでもなく、むしろ淡々とした展開に、ほんのり気持ちが温かくなるようなハートウォーミングな内容。近年ロケしたはずなのに、1991年当時と(おそらく)変わりないだろうキューバの首都ハバナの街並と、ソ連崩壊を現場で体験した自分の経験とも重なる貧困の地上と資本主義の波がロシアへ到来する予兆が、実に現実味を持って押し寄せてくるようで、大いに懐かしい感慨にも耽りながら鑑賞することが出来た。

 冷戦が終焉し、これから東西の交流が始まろうという時代ではあるが、当時はもちろん全てが半信半疑で疑心暗鬼。あるいは、今のこの時代から振り返ってみても、果たしてその後、東西の、あるいは持てる国持てない国の差は縮まったのだろうかと疑問に思うことが多い。むしろ今、時代の揺り戻しが起こりつつある。

 バブルの崩壊、アジア通貨危機、リーマンショック、様々な国際的な浮沈を経験しながらも、世界は少なからず当時よりは豊かに便利にはなっているとは思う。ところが、当時(1991年)を描いたこの作中の暮らしぶりが、決して貧しいだけのものとは映らないのは何故だろうか。

 この時代の後、人類は、通信やデジタル機器、ITの発展で、テクノロジーの極みをどんどんと精鋭化し、高みへと一直線に駆け上っていくように見える。だがしかし、高く高く登るにつれ(as it lifted higher)、我々は相互理解のための意思疎通の機会を失っていった(we lost communication)のは否めない。

 アナログな無線を通じて心を通わせ、宇宙からの帰還という大問題に挑むセルジオとセルゲイ。彼らの心のこもったコミュニケーションに、我々は大いに学ぶべきことがある。世界は、今こそ、対話を必要としている。

『ニテヒナル Куба・Rusia』写真展 @カスミつくばセンター

YAJ(矢島徹至)

京都生れ、奈良育ち、東京在住。商社マン。

ロシア駐在中、МФК PHOTOS に加入。それを機に作品としての写真を撮りはじめる。

帰国後も精力的な撮影活動をこなし、日露文化交流イベントへの作品提供、演奏会のカメラマンを務める。

また、演奏会やライブとのコラボ写真展も企画。音とビジュアルの融合もひとつのテーマとして活動している。 

「被写体と私、その間にカメラがある。常に三位一体の関係です。」

キューバ/ロシア アンコール写真展
『ニテヒナル Куба・Rusia』

風土も、国の規模も違えば、国民性も異なるロシアとキューバ。それなのに、なぜ、情景や日常の一コマを切り取ると、どこか似ているのだろう。同じ目標に向かっていた時に流れていた時間が今も交差しているのだろうか。
会期中、キューバ倶楽部トークイベント開催!詳細はМФК PHOTOS Facebookページ をご確認ください。

会 期:2019年1月21日(月)〜2月2日(土)
場 所:Café nook (MAP )
時 間:月〜金 12:00-22:00 土 13:00-22:00
写 真:YAJ (矢島徹至)
解 説:キューバ倶楽部 斉藤真紀子

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