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日本におけるロシア

『我が心』幕末時代に惹かれ @ヤナ・サコフスカヤ
日本文化、特に幕末時代に惹かれ、ロシアの人々にその魅力を伝える活動をされているヤナ・サコフスカヤさんにご寄稿いただきました。

はじめまして。
私はヤナ・サコフスカヤと申します。29歳で、モスクワに住んでいます。大学で日本史を専攻して、現在は時々幕末について講義をさせていただいております。そして、約1万5千人のフォロワーさんがいる日本文化・歴史に関するページに毎週幕末について記事を書かせていただいております。まだ始まったばかりですが、一年間書き続けるつもりです。より多くの人に日本の歴史、特に幕末時代の魅力を伝えていきたいと思っています。

ファンタジー小説の作家をしており、デビュー作は『足並みをそろえて』と言います。その本には登場人物として幕末の人物も出ていますから、ロシアの人だけではなく、できれば日本人にも読んでいただきたいと思い、日本人の先生に校正していただきながら自分の作品を日本語に翻訳中です。
 

日本に興味を持ったきっかけ

14歳の時、母と一緒にクエンティン・タランティーノの『キル・ビル』という映画を観ていました。映画の最後のシーンにおいて、主人公のザ・ブライドと彼女の敵であったオーレン石井は日本庭園で戦います。オーレン石井の頭の上の部分はザ・ブライドの刀で切られ、美しく飛んで、真っ白い雪に落ちました。

その時私の心の中に何かが動きました。母に振り向いて、こう言いました。
「お母さん、どうしてこれがそんなに美しいのか、私、知りたい。日本語を習いたい。」
数日後、雑誌の広告で見つけた先生に日本語を習い始めました。

日本語を習い始めて、もう人生半分以上になります。しかし、まだまだです。テレビドラマなどは字幕なしで楽しく観られるようになりましたし、日本語の現代小説も問題なく読めるようになりましたが、日本語を勉強すればするほど、もうわかっていることよりまだわかっていないことの方が多く感じられます。
 

幕末時代に惹かれて

大学で日本史を専攻して、日本史の事実は多く知っています。能、茶の湯とその陶芸、俳句などの伝統的な芸術に感心し、広島・長崎の原子爆弾投下などの歴史の悲劇のページに恐ろしさや深い悲しみを感じてきたのですが、心が破れそうになると感じたのは慶応3年11月15日に坂本龍馬が暗殺されたという事実に出会った時です。

どうして広島より感情的になったのか、自分にも問いながら、もっと知りたいと思って、幕末のことについて耽読し始めました。

日本へは2回行ったことがあります。サイクリングツアーに参加していたロシア人のグループに同行し、ガイド・通訳者をやらせていただきました。ツアーが終わって、5日間高知と長崎の旅行を満喫させていただきました。
海援隊ゆかりの地を訪問しました。長崎には一目惚れでした。涙が出るくらい、心から幸せでした。長崎には何度でも”帰りたい”です。長崎にいて、人生で初めてロシアに帰りたくないと思いました。飛行機にも乗り遅れてしまいました(笑)

できれば、いつか長崎で幕末に関する仕事・研究をさせていただきたいと思いました。例えば、手紙、日記などの史料を英語やロシア語に翻訳しながら、幕末の魅力を伝えていきたいと思いました。
しかし、私には文語がまだ難しすぎて、現代語訳がなければ困ります。高知市ご出身の先生に土佐弁を習ったこともありますが、坂本龍馬の手紙には頭を悩まされます。まだまだです。でも、いずれ翻訳できるように、成長したいと思います。今は現代語訳にされた資料と、幕末・明治時代の文語の勉強に挑戦中です。

 

モスクワアマチュア女子劇団『壬生狼』

モスクワには『壬生狼』[Волки Мибу]というアマチュア女子劇団があります。ミュージカルシアターで、演劇の中では幕末をテーマにしたミュージカルは二つもあります。一つは、新選組をテーマにした劇団名と同名の『壬生狼』というミュージカルで、もう一つは坂本龍馬をテーマにした『切り札の龍』というミュージカルです。そのミュージカルの夜の劇場はいつも満席です。
ほかに、日本神話をテーマにする『狐の物語』と安倍晴明をテーマにした『鬼のみちゆき』というミュージカルもあります。

劇団の二人の監督、チャロアイトとエニッドは幕末時代に興味を持っているのが共通点で2007年に出会いました。その当時、幕末についてのロシア語の情報はほとんどなくて、二人は必死にわずかなロシア語による情報を探したり、日本語と英語などから翻訳したりしながら、そこからインスピレーションを得て詞を書くようになりました。

『狐の物語』より

 
ある日、チャロアイトは、「歌詞は一つのミュージカルなら余裕で作れるほど、たくさんあるね」と言い出しました。冗談交じりで言ったけれど、次に会った日にエニッドが『壬生狼』というミュージカルのリブレットの提案書を持ってきました。それは夢への第一歩でした。

『壬生狼』より

 
2008年7月頃、ミュージカルの歌詞はもう完成されていました。二人は俳優、ダンサー、振り付け師などを誘い始めました。驚いたことに、「新選組についてミュージカルを作りませんか」というアイディアを多くの人が応援してくれました。そして、エニッドが、京都の芸子が昔の物語を踊りなどで語る『都踊り』のことや、出演者が女性である宝塚歌劇団のことをチャロアイトに紹介して、二人は新選組についてのミュージカルをする劇団は女性劇団にしようと決めました。そのあと二人はできるだけ詳しく幕末のことを勉強することはもちろん、日本へ行って、新選組などのゆかりの地を訪れ、歴史上の人物の子孫の方々のお話も伺ってきました。

ミュージカルの初リハーサルは2009年1月18日に行われました。参加したい者は皆集まって、ギターを伴奏にミュージカルの曲を歌ってみました。その日を劇団『壬生狼』の創立日としています。

あの頃は試行錯誤の繰り返しの時で、本物の「劇場」を作ろうとは思いませんでした。ただ、一つのミュージカルを作ることができれば充分嬉しいと思っていました。そのあとは想像していませんでした。その夢をかなえるためにどれほどの努力が必要なのか、この先の道がどれほどきついのかも想像していませんでした。でも、この道を歩き続けてわかったのは、恐れずにやり続けていれば、きっと夢が叶うということです。

『狐の物語』より

 
ミュージカルの披露会は2009年6月に無事に行われました。
現在、劇団に参加しているのは約70人です。レパートリーのオリジナルミュージカルは七つで、『壬生狼』劇団のミュージカルの強い印象を与える特徴は殺陣連盟の専門家に監督された、ステージにおける刀などでの戦いです。日本を舞台にしたものだけではなく、七つのミュージカルの中で三つはケルト神話、伝説のテーマにしています。劇団はサンクトペテルブルク、カザン、 エカテリンブルクなどに巡業しています。2017年には『モスクワの優秀な劇団』というディプロマを受賞しました。

日本文化と伝統に尊敬と愛を持ち続け、モスクワでいろいろなイベントを行ってきました。2012年に大好きな時代をテーマにした『幕末大祭』。モスクワで行われた “Samurai: art of war” という展示会にも参加しました。2011年、東日本大震災のとき、慈善コンサートを行いました。「ロシアにおける日本年」の2018年に、劇団のミュージカルは正式のイベントのスケジュールに入って、在ロシア日本大使館のホームページに劇団、ミュージカルについての情報も載せられました。
 
↓↓↓ミュージカル『切り札の龍』の主題曲『憎悪』

↓↓↓劇団『壬生狼』[Волки Мибу]公式サイト

 

『我が心』という曲について

2016年になぜか日本語で作曲するようになりました。
12歳からギターを弾いてきて音楽カレッジにも通ったこともありますし、音楽とは長い付き合いだったと思いますけど、日本語の歌を書き始めて、自分でも驚きました。書いてみた曲の第二の曲はその『我が心』という曲でした。その時、イリナ・カザンスカヤという作曲家・ピアニストとの協力が始まりました。

その時から、この歌を明治維新150年の何かのイベントで歌わせていただきたいという夢を持ち始めて、ボーカルレッスンに通い始めました。歌は少しずつ良くなっていっても、1人でレコーディングするレベルまでなかなか達していませんでした。2018年に、おそらく思ったようにかなわないとわかりましたけど、せめてレコードとしてその曲を日本に送りたいと思いました。

だから、1人ではなくて、幕末に詳しく歌が上手な人と一緒にレコーディングしたいと思いました。まずは新選組にとても興味を持っているリュさんとレイラさんに声をかけて、賛成してもらいました。
それから、勇気を出して劇団『壬生狼』にも声をかけました。監督さんと二人の優秀な俳優に「一緒に日本語で曲を作りませんか」と。嬉しいことに、また賛成してもらいました。

リハーサルが始まりました。ある日のリハーサルに、監督さんが私が書いた歌詞のロシア語訳を持ってきてくれました。その訳詞が美しくて美しくて、ロシア語と日本語、二つのバージョンをレコーディングしよう、とみんなで決めました。

ビデオはどうしよう?というなかなか決められないところもありました。シアターシーズンが始まって、劇団の皆さんが大変忙しくて、ビデオ作りはとても無理でした。その時、木戸孝允の役を演じたアレックスさんは「サンド・ショーはどう?」と提案してくれました。「なるほど!」と思って、『Sands Of Time』というモスクワのサンド・アート・シアターに制作を依頼しました。ビデオのシナリオのアイディアをたくさん出して、『Sands Of Time』の監督さんに素晴らしいシナリオ、そして、サンド・ショーのビデオを作っていただきました。

11月15日、龍馬の日に、私が龍馬について講義をしたあとで、無事に曲を披露しました。こんな風に私にとってその大事の日を過ごせて、本当に幸せです。講義と披露会に来てくださった皆さんに感謝しています。そして、もちろん、一緒に曲を作ってくれた皆さんに感謝でいっぱいです。
この曲を作っている間にも楽しくて、すてきな出会いがたくさんありましたし、これからもとても楽しみです。よろしくお願いいたします。

ヤナ・サコフスカヤ

歴史家、作家、ソングライター

幕末が心から、バカみたいに好きなロシア人

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