
去る1月30日(木)、めぐろパーシモンホールにて”音楽と映像で旅する「未来へつなぐ 世界の音楽遺産」コンサート 〜セルビア・ロシア・日本編〜”が開催されました。
現代社会は、テレビやインターネットを通じていろいろな音楽や映像が配信されています。溢れるほどの情報量、その中から私たち自身が選択をし、音楽を聴いたり映像を鑑賞したりしているはずです。
楽しいときには笑い、悲しいときには泣く。嬉しい涙、哀しい涙。時には怒り、そしてわかちあう喜び。身体全体が揺さぶられるような感動。人間の一生の中で朽ち果てるものもあれば忘却されていくものもあります。しかし、ある種の深い感動は消えることなく時間の経過と共に輝きを増すはずです。
本日のコンサートで奏でられる作品は、過去から未来へと繋ぐべき偉大な世界の音楽遺産です。ここには「自然への畏敬」「生きることの厳しさ」「真実の愛」などが余すことなく描かれています。
美しい音楽と映像は私たちを過去から未来へと導いてくれるでしょう。素直に音楽へ耳を傾け、ゆったりと空間に身を任せましょう。きっと、本来の私たちの 姿を思い出させてくれるはずです。
感動の中では、遠くのそれこそ太古の昔からの人間の連綿たる思いが明確に感じられる時があります。遠い過去からの感動の集積が無数の光となって今も私たちに振りそそいでいます。



ロビーではセルビア料理の本や民族舞踊のDVD、セルビアの国民食アイバル(関連記事▶️ 👩🍳テーブルに国境はありません 🇷🇸セルビア料理レストラン Serbian Night )の販売、ロシアの雑貨・お菓子の販売、ロシアのファッションブランド「URBAN TIGER」の紹介などもされていました。




昨年公開された日露合作映画『ソローキンの見た桜』(関連記事▶️ 日露戦争時代のロミオとジュリエット 映画『ソローキンの見た桜』3月22日全国公開 )にご出演されていた俳優の山本修夢さんのナビゲートによりコンサート第一部はスタート。
まずは平岡貴子さん(関連記事▶️ 『ミキーツキィリサイタル』×『4 notes from Russia』写真展 フォトレポート )による日本の歌、『かぞえうた』(日本古謡)、『たなばたさま』(下総皖一)、『さくらさくら幻想曲』(平井康三郎)から音楽の旅が始まります。スクリーンにはМФК PHOTOS 中村正樹さんによる各国の映像が映し出されます。



「万華鏡」Op.50より「オリエンタル」 C・キュイ
コンドラテイエワ・ナターリアさんのヴァイオリン、大塚玲子さん(関連記事▶️ 大塚玲子ピアノ・リサイタル リストと19世紀後半のロシアピアニズム )のピアノ伴奏。 ヴァイオリンとピアノのための24の小品集「万華鏡」の中の一曲。 セルビア民謡から採られた東洋的なメロディーの響きはロシア人に好まれ、チャイコフスキーの「スラヴ行進曲」などにも使われている。琴線に触れる珠玉の一曲。
そしてワレンチナ・パンチェンコさんによるセルビアの歌へ続きます。
もっと早く貴方に会えたなら J・マタノヴィッチ
<日本語訳歌詞>
もっと早くに貴方に会えたなら、すべては違っていただろう。
もう雪が降っていたのに、私たちは春の恋を望んだ。
雪が、雪が降っていたのに。
ひそかに、情熱的に君を愛せば、幸せを見つけられたかもしれない。
遅すぎると言うのはつらい、涙の向こうに悲しいつらい笑顔。
もっと早くに貴方に会えたなら、違っていただろう。
私を信じれば、違っていただろう。
セルビアの歌のメドレー M・スボータ
①子どもたちのキラキラ宇宙
<日本語訳歌詞>
世界も惑星もない
子どもが行けないような、
子どもたちの道は水のように
遊びから自由へ。
花は庭の装飾
蝶は花の飾り、
想像力いっぱいの子どもたち
彼ら子どもは 世界のキラキラ…
②アフリカに行った
<日本語訳歌詞>
アフリカに行った
パプリカ(とうがらし)を植えに
あの黄色いのを知ってる?
かわいいけどからい
太ったゴリラ
枝にいた猿
これはバナナだ!
みんな何も疑わなかった
食べちゃったら、
そして黙り込んだ
バナナみたいなパプリカで
あの黄色いのを知ってる?
かわいいけどからい
遠くのあそこで セルビア民謡
1916年にギリシャのCorfu島で作曲されたセルビアの民謡。第一次世界大戦中にギリシャ周辺まで進行したセルビア軍がアルバニアを経て後退した時の心情を歌いだしており、今でも、非常に有名でセルビア文化と国家のアイデンティティの象徴として国歌のようにセルビア人の間で歌い継がれています。この曲の歌詞は何種類か存在していますか、いずれもセルビア人の祖国を想う心情が歌われています。
<日本語訳歌詞>
あそこは海から遠く
あそこに私の村が、あそこに私の愛が。
ああ、この悲しくて不幸な夜が来なければならなかったのか
それは私の愛する人が血なまぐさい戦いに向かったとき。
あそこは遠く、黄色いレモンが咲くところ、
あそこにセルビア軍のただ一つの道があった。
祖国を離れ、私はコルフに住む、 でも私はまた朗らかに叫ぶ:「私たちの祖国セルビア!」








第二部、音楽と映像の旅はロシアへ。
「吹雪」より G・スヴィリードフ
作家プーシキンの小説「吹雪」を基にした映画「吹雪」の音楽、全9曲の中の二曲。
① ロマンス やや力強く哀愁に満ちたメロディーで曲は始まり、その後、美しくもはかない雰囲気のメロディーを奏で、高揚感をまし、やがて静かな演奏となり、そのまま静かに終曲していく。
② ワルツ
哀愁を感じさせるような雰囲気があり、華麗ではあるが、どことなく陰を感じるようなワルツ。終始一貫したテンポと高揚感が心に響く。
オペラ「雪娘」より 雪娘のアリア N・リムスキー=コルサコフ
雪娘(ゆきむすめ)はロシア語で「スネグーラチカ」と言い、ロシアで最も知られたおとぎ話の主人公の一人。スラブ伝説によると、太古のロシアでは太陽の神の不機嫌で、年々冬が長くなっていった。雪娘は、冬将軍と春の女神の娘。雪娘は人間の世界に暮らし、一人の男性に憧れを抱く。
<日本語訳歌詞>
私は女友達と 木の実を摘みに行き
その楽しげな呼び声に 答えるの
輪になって歩き レーリの歌を繰り返すの
春の歌のリフレーンを 乙女達と
可愛い あなたの雪娘には
歌なしでは 人生は楽しくないのよ
ピアノソナタ第2番 Op.18 「幻想ソナタ」 A・スクリャービン
超絶技巧の練習により右手を壊していたスクリャービン、第1番のピアノソナタで葬送行進曲を書くほど彼はもう手が治らないと絶望していたが、願いが叶って治り、この2番のソナタには神に対する感謝の心が溢れている。短調だが、とても幸せな、ハッピーエンドの曲。 第1楽章…月影ささやく、クリミアの暖かい海の夜。細かなパッセージは、海のさざ波を表現している。 第2楽章…嵐の大洋。非常に短い楽章だが、常に迫りくる大小様々な波のうねりの中で、豊かな色彩やドラマがダイナミックに描かれていく。
「夜鳴きうぐいす」 A・アリャビエフ
<日本語訳歌詞>
私の愛しいうぐいすよ 麗しの声
あなたはどこへ飛んでいくの?
一晩中ずっと 歌い続けるの?
私の愛しいうぐいすよ 麗しの声
前奏曲 Op.3-2 「鐘」 S・ラフマニノフ
ロシアにおいて「鐘」の存在は非常に大きいものです。教会の勤行開始を知らせる鐘、婚礼を祝う鐘、死者への弔鐘など…人生のあらゆる場面において、鐘の音は人々のそばにあります。ラフマニノフはこう記しています。
教会の鐘の音は私の知っていたロシアのあらゆる町を支配していた。生涯を通じて、私は、朗らかに響く鐘の音や、哀愁を帯びた鐘の音の雰囲気や音楽に親しんできたのだ。そういう鐘に対する愛着は、ロシア人の誰もがもっている。



オペラ「光太夫」 F・グセイノフ
オペラ「光太夫」は、江戸時代(1783年)現在の三重県白子から出港したコメ運搬船(船長大黒屋光太夫)が嵐で遭難しロシアのアムチトカ島に漂着し、サンクトペテルブルグでエカテリーナ女帝の帰国許可を得て帰国を果たすという壮絶な史実をオペラ化したものであり全編ロシア語で書かれている。これは故青木英子が1970年代に当時日ソ友好をも目的とし構想を開始し20年の歳月を費やし作曲家ファルハンク・フセイノフ(アゼルバイジャン出身・作曲をハチャトリアン、カラカラエフに師事)よって完成した劇的オペラ。
① エカテリーナ女帝のアリア (桜の花の咲く遠い国)
遠い国、海に囲まれた国
春には桜の花が咲き匂い、
木々は鮮やかに彩る
秋には、稲が野を黄金に染め
人々は平和を楽しんでいる
孤高を守り、隣国とつき合うこともない、
桜の花が咲く遠い国
秋には、稲が野を黄金に染め
人々は平和を楽しんでいる
春には桜の花が咲き、
木々が鮮やかに彩る遠い国よ
光太夫よ、貴方は強い人、
ラックスマンは貴方をよく助けた
安心して祖国へ戻りなさい、
両国は平和と友好を結ぶでしょう
祖国へ戻りなさい、
春には桜が咲き
木々が鮮やかに彩る遠い国へ
② ソフィアのロマンス(光太夫との別れの悲しみ)
白いハコヤナギよ
色褪せてきたハコヤナギよ
私の愛よ、優しい愛よ
でも、何故こんなに寂しいのか
哀しみに耐える力はもうない
血の一滴までも出してしまった
小路に佇んで
私は泣き叫びたい
ハコヤナギよ、ハコヤナギよ
綿毛もみんな散ってしまった
昔から愛は悲しいものだった
雲の向こうに隠れていた
真赤な太陽よ
ああ、不幸せな鶯は
悲しく飛び去っていく


光大夫の帰国とともに、今回の音楽と映像の旅は終了。
終演後には来場者から「次はいつ?」「どこの国?」との声も。
具体的には決まっていないそうですが楽しみにしましょう。


平岡 貴子 (ソプラノ)
桐朋学園大学短期大学部卒業後、同大学音楽学部デイプロマコースで研鑽を積む。その後、サンクトペテルブルグ音楽院で学ぶ。2007年「モスクワ・アマデウス音楽劇場」で、モーツアルトオペラ「魔笛」第一侍女役でオペラデビュー。20001〜2005年、国際交流基金助成「日本文化週間」に招聘され、ドイツ、オーストリア、デンマークなどヨーロッパ各地で公演。2010、2014年ロシア文化フェスティバルin Japan チャイコフスキー「王女イオランタ」ブリギッタ役でボリショイ劇場ソリストたちと共演。2015、2016年ロシア国立ミハイロフスキー劇場バレエプリンシパルと共演。2018年10月に「在ロシア連邦日本国大使館」と「モスクワ・アマデウス音楽劇場」との共催で行われた、オペラ「光太夫」モスクワ初演のプロデュースを手掛ける。また、本オペラにおいて、エカテリーナ二世の女官役として日本人唯一の出演を果たす。現在、「モスクワ・アマデウス音楽劇場」ソリスト ロシア国立モスクワ中央教育センターNo2030客員講師。
(関連記事➡️ 『ミキーツキィリサイタル』×『4 notes from Russia』写真展 フォトレポート )

ワレンチナ・パンチェンコ (メゾソプラノ)
ロシア国立ウラジオストック音楽大学卒業。同時にロシア国立プリモールスキー・フィルハーモニ専属ソリストとして活動。モーツアルトのオペラ(フィガロの結婚)のケルビーノ役でデビュー。ビゼー(カルメン)、グリュックの(オルフェオとエウリディチェ)などの主な役を歌い、チャイコフスキーの(エフゲニ・オネーギン)でオリガ役、リムスキー・コルサコフ(雪娘)でレーリ役、プッチーニ(蝶々夫人)でスズキ役にも出演。モーツアルトとヴェルディの(レクイエム)、ベトーヴェンの(第九)、プロコフィエフのカンタータ(アレクサンドル・ネフスキー)、チャイコフスキーのカンタータ(モスクワ)、スクリャビン交響曲第1番などでアルト・ソロを歌う。日本、ロシア、中国、チェコ、ドイツ各地でミハイル・アルガジエフ、アルカ―ジ・シテインュフト、ダニエーリ・クリャイネル、コンラド・ユーヘネリ指揮者と共演。
G8沖縄サミット文化プログラム、ドヴォルザーク・フェステバル(プラハ)、ヘンデル・フェステェバル(ギョテェンゲン)に招聘され大絶賛される。近年は、ロシア文化フェスティバルin Japanや 日本とロシア音楽の架け橋プロシェクトにも携わり、日露音楽交流に尽力している。
日ロ文化交流センター名誉会員。
(関連記事➡️ «アンドレイの世界» part II 〜映画「ソローキンの見た桜」公開 特別公演〜 )

コンドラテイエワ・ナターリア (ヴァイオリン)
1992年 ロシアのカムチャッカ国立音楽大学弦楽器科ヴァイオリン専攻卒業。在学時に極東地方のヴァイオリンコンクール2位入賞。卒業後は高等学校音楽科教諭として活動。1998年 国立ウラジオストック芸術大学音楽部弦楽器科ヴィオラ専攻卒業。卒業時に特別優秀技術賞を授与される。卒業後は国立ロシア極東交響楽団に入団。ハバロフスクを拠点に、シンフォニーでの活動に加えカルテットやトリオ、デュエットといったスタイルを問わない演奏活動を行う。現在、東京シティフィルハーモニー交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、群馬交響楽団、日本サロンオーケストラのエキストラとして活動する傍ら、日本在住の世界各国のアーティストと日本各地で演奏活動を行っている。2004年 Music Web records 社より西洋人女性で構成された“インストゥルメンタルユニットUNISON”のリーダーとしてメジャーデビュー。2011年 CDリリース“Kurt Atterberg” 作曲家・Piano Quintett C-major. NHKラジオの“世界のラジオ”にゲスト出演。
2018年 山野楽器にヴァイオリン・ヴィオラ教師として活動。

大塚 玲子 (ピアノ)
桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学音楽学部演奏学科卒業、同大学研究科修了。チャイコフスキー記念ロシア国立モスクワ音楽院研究科を最優秀で修了。
93年 ピティナピアノコンペティション西日本本選総合優勝、併せて読売賞。 96年 ワルシャワフィルハーモニーホール(ポーランド)にて国立室内管弦楽団と共演。2004年 桐朋学園音楽部門同窓会奨学生に選抜。 05年 浜松国際ピアノアカデミー修了。10年~12年 モスクワ音楽院ピアノ科生選抜コンサートに多数出演。12年 スクリャービン国際ピアノコンクール(パリ)第1位。スクリャービン記念博物館(モスクワ)にてソロリサイタルを行い、 好評を博す。ロシア国営テレビ局の取材を受け、ロシア国内で放送される。13年 バルセロナにてソロリサイタルを行う。15年 BMWの依頼により、ショールームで多数ソロリサイタルを行う。19年 文化庁/日本演奏連盟主催「新進演奏家育成プロジェクト リサイタル・シリーズTOKYO85」に選ばれ、東京文化会館に於いてソロリサイタルを行う。
現在毎年国内外で、ソロ、室内楽、伴奏など幅広く演奏活動を行う傍ら、後進の指導にも力を入れている。
(関連記事➡️ 大塚玲子ピアノ・リサイタル リストと19世紀後半のロシアピアニズム )

山本 修夢 (俳優) *ナビゲーター
立教大学在学中に雑誌「FINE BOYS」専属モデルとして活動後、俳優に転身西岡徳馬に師事。以降舞台映画テレビ等で幅広く活動。2002年「銀の男」で映画初主演。2003年主演舞台「花のお遍路さん」では、文化庁より新進芸術家の称を受賞。2016年 ロシア戦勝記念日特別番組「オールデン」に日本人陸軍少将役で出演。2018年NPO法人日露文化経済交流促進協会理事就任。2019年放映のロシア国営放送連続ドラマ「ゾルゲ」では、日本人キャストの主演として出演した。又同年、井上雅貴監督の日露合作映画「ソローキンの見た桜」では捕虜収容所ロシア語通訳者・室田役で出演した。2017年、2019年出演したロシア音楽劇『アンドレイの世界』ではロシア語で一人芝居をした。公開待機作品にアレクサンドル・ドモガロフ・ジュニア監督の日露合作映画「ハチとパルマの物語」がある。
(関連記事➡️ 日露戦争時代のロミオとジュリエット 映画『ソローキンの見た桜』3月22日全国公開 )

村井 崇記 (俳優)
映 画:
2018年 北白川派 鈴木卓爾監督「嵐電」
2017年 栗原翔監督「しかと青くあれ」
2017年 青山真治 鈴木卓爾 福岡芳穂監督「カラフルな細いパイプ」
舞 台:
2017年 アクション公演「ワイト〜惨めな人間〜」北村勇気演出
2016年 凄六企画「LOVER」有田衣李演出
2015年 殺陣公演「黒鬼」小森ちひろ演出
2014年 授業公演「犬狼都市」林海象演出

熊谷 真由 (俳優)
映 画:
室賀厚監督「デリバリー」
C M:
スベルティ「ぱっくん分解酵母」、
シャチハタ「OSMO」、
WebCM イオン、
資生堂広告モデル
テレビ:
EX「深層捜査2」司会者役、
CX「痛快TV!スカッとジャパン」、
木曜ドラマ「マネーの天使」第3話、
CX「週末ふらっとデート」、
NHK「ドラクロワ」再現 VTR、
テレ東「ウェルカムTV 」、
テレ東「世界ナゼそこに?日本人」再現VTR