日本では珍しいジョージア映画のご紹介です。 ジョージアというと日本ではまだアメリカのジョージア州を思い浮かべる方が大部分かと思いますが、ワインで有名なグルジアですね。
2008年にロシアとの戦争があり(8月戦争)、2009年以来ロシアとは国交断絶状態、国名表記が従来の「グルジア」から英語表記に基づく「ジョージア」に変更されましたのが日本では2015年、まだ日が浅いので馴染んでいないかもしれませんね。
『葡萄畑に帰ろう』[原題:სავარძელი 英題:The Chair]
- 監 督:
- エルダル・シェンゲラヤ
- 出 演:
- ニカ・タバゼ ニネリ・チャンクベタゼ ケティ・アサティアニ ナタリア・ジュゲリ ズカ・ダルジャニア
- 制 作:
- 🇬🇪ジョージア (2017)
まず原題の«სავარძელი»や劇中での文字を見てもグルジア文字は可愛いですね。日本で大昔に流行した丸文字のような雰囲気です。何とも似ていないので、ちゃんと勉強をしないとまったく読む手がかりもありません(ちなみに国名の表記変更にともなって”ジョージア文字”とする書き換えも見られますが、学会等で正式な決議はされておらずグルジア語、グルジア文字のままだそうです)。
で、この«სავარძელი»、英題では”The Chair”だそうで、鑑賞後にそのことを知ったのですがなるほど、そういうことだったかと。
『葡萄畑に帰ろう』という邦題とトレーラーからはハートウォーミングな人間ドラマを想像するかもしれませんがさにあらず。
エルダル・シェンゲラヤ監督は長く政治の世界に身を置いており、自身の経験をもとにした風刺コメディとなっています。
主人公のギオルギは”難民追い出し省”の大臣という設定なのですが、映画の冒頭に執務室に”椅子”が運ばれてきます。この”椅子”が裏の主役として最後まで活躍?します。

この”難民追い出し省”というのはもちろんフィクションなのですが、職員が全員ローラースケートを履いていたり、前述の”椅子”もですけれどとてもシュールな表現が散りばめられており、トレーラーだけ観て先入観を持って鑑賞すると戸惑うかもしれません。しかしそこが面白味でもありますので、これ以上は情報を入れずにまずは劇場へ。
ジョージアとロシアは断交状態ではありますが、本作はロシアのアカデミー賞たるニカ賞で最優秀外国映画賞を受賞しています。
政治の世界で関係が断絶していても、芸術・文化的なつながりは簡単には消えない。ジョージア同様にロシアにも、両国間に友情や友好関係が必要だと考える人がいる、それが今回のロシアによる授賞で示された。
エルダル・シェンゲラヤ監督
@ニカ賞授賞式
朝日新聞GLOBE+ より

東京 岩波ホールでの上映は2月8日までですが、順次全国でも公開されますので公式サイトをご確認のうえ是非お出かけください。
